東宮山春宮山しも書く。名西郡神山町と美馬市木屋平の境をなす山。神山と木屋平ほを結ぶ国道439号の川井トンネルから北東約2kmの地点にある。標高1090.5m。
「阿波志」は「東宮城、中村山二戸名にあり、中村・三木及び名西郡江上山三村にまたがる。けだし土御門天皇の行在所なり。故に宮城と称す」と記載する。江戸期には東宮城が一般的呼称か、「灯下録」にも同名の記載がみえる。
地元では「東宮さん」「おとごうさん」と呼ぶ。山頂に2つの小祠を祀る。1つは神山町のもので東宮神社と称し、天照皇大神・国常立命を祀っている。もう1つは木屋平のもので、春宮神社と称して土御門天皇・後嵯峨天皇を祀っている。
頂上から約200m下に東宮神社の拝殿があり、馬場と呼ばれる広い草原があり春にはワラビが一面に生える。
頂上の小祠はもとは1つであったが、その所属を巡って宝暦4年に両村の間に流血騒ぎがありのち、別々に社殿を建立したと伝える。
かつては、旧5月1日の祭礼には神輿や屋台まで出てにぎわい両村から約1000人の人が集まったという。
地質は三波川帯に属す。山頂付近は原生林に覆われ、ブナ・イタヤカエデ・ヒメシャラ・イヌシデコミネカエデなどが混生する。
登山同は川井トンネル横の売店から登り、神山側の山腹を巻いて東宮神社の拝殿に達しそれより直登する。約1時間30分を要する。
「角川日本地名大辞典」より